
結婚式の打ち合わせが始まると、新郎新婦のお二人が必ず直面する「大きな壁」があります。
それが、「結婚式の金銭感覚のバグ(麻痺)」と、「果てしなく続く打ち合わせのめんどくささ」です。
普段のスーパーや買い物なら、100円、1,000円の差にしっかり悩むはずなのに、式場の見積もり書を前にすると、完全に金銭感覚が狂ってしまいます。
- 「各テーブルのお花、2,000円ランクアップしますか?」 ➔ たった2,000円と思ってOKすると、10卓あればそれだけで+2万円。
- 「コース料理、お一人様500円だけ上げますか?」 ➔ ワンコイン感覚でOKすると、100人呼べばそれだけで+5万円。
なぜ、こんな風に金銭感覚がマヒしてしまうのか? 理由は明確です。
「打ち合わせが何回にも小分けにされるので、前回の内容や増額した金額を覚えていられないから」です。
最初は月に1回。式が近づくにつれて2週間に1回……と小刻みに打ち合わせが入るため、その都度「数万円の追加オプション」をポーンと決めさせられます。前回の総額をリアルに実感できないままジャブのように加算されていき、気づいたときには見積もりが数百万円跳ね上がっているのです。
「これ、1日朝から夕方まで缶詰でまとめてやれば一瞬で終わるのになー!」 ……と、打ち合わせのたびに当時思っていた私自身、昔120人呼んで派手に結婚式をやった経験者です(笑)。
だからこそ、新郎新婦が準備に疲れ果てて頭がバグってしまう気持ちは、誰よりも痛いほどよく分かります。
ですが、元・衣装レンタルも販売も両方やってきた仕立て屋として、これだけはお客さんに絶対に伝えています。
「冷静になって! 数時間しか着ない衣装に数十万払って、しかもサイズを妥協するなんて、一番もったいないですよ!」
「5万円〜」の罠と、新作10万超えの現実
衣装のカタログを見ると、「レンタル5万円〜」なんて書いてあることがあります。 でも、実際に衣装サロンに行ってみるとどうなるか。
5万円で借りられるのは、何年も前に作られて何十人・何百人もの人が着古したような、デザインも生地も野暮ったい衣装ばかり。 「せっかくだから綺麗なものを」と少しでもお洒落な新作に目を向けると、平気で10万円オーバー、新郎のタキシードなら20万〜30万円という金額に一気に跳ね上がります。
たった数時間、披露宴のあいだ着るだけの服に、数十万円。 個人の価値観ですから、それにお金をかけるのが良い・悪いという話ではありません。
ですが、元レンタル業の人間として、業界の裏側を知ってしまうと「なぜそんなに高くなるのか」の正体が見えてきます。
なぜレンタル衣装はそんなに高いのか?裏側のカラクリ

「高級なブランド生地を使っているから?」 「1回着るたびに、ものすごく高いクリーニング代がかかるから?」
そう思っている方がほとんどですが、実は違います。
衣装を仕入れる原価自体は、みなさんが想像するほど目の玉が飛び出るような金額ではありません。 さらにクリーニングに関しても、ブライダルには「衣装専用のクリーニング業者」が存在するため、一般の方が思っているよりも全然安く、びっくりするくらいのコストで綺麗に洗われています(※和装の正絹などは別格で高いですが、洋装のタキシードなどは特にそうです)。
では、なぜあんなにレンタル代が高いのか? 答えは簡単で、「結婚式は毎日あるわけではないから」です。
居酒屋のように毎日お客さんが回転するビジネスではありません。 仕入れた衣装のうち、流行やサイズが合わず、「一度もレンタルされないまま倉庫で眠り、そのまま廃棄される衣装」だって普通にあります。
つまり、高額なレンタル代の正体は、衣装そのものの価値というよりも、「毎日は稼働しない維持費」と「一度も着られずに廃棄される衣装のロス代(在庫リスク)」が、借りる人の料金にまるまる乗っかっているからなのです。
一番理不尽なのは「高いお金を払ってサイズを妥協すること」
私がレンタルをやっていた当時から、ずーーーっと心の中で思っていたことがあります。
「こんなに高いお金を払ってもらうのに、サイズを妥協させなきゃいけないなんて、絶対におかしい。絶対にスーツを買った方がいいのに……」
レンタル衣装は、すでにS・M・Lなどの決まった型で作られています。 肩幅が広い人、腕が長い人、鳩胸や猫背の人、太ももが張っている人……人間の身体は一人ひとり全員違うのに、既存のサイズに無理やり身体を押し込むしかありません。
その結果どうなるか? 「肩幅に合わせたらウエストがダボダボ」 「ズボンの丈は合っているのに、お尻がパツパツ」 数万〜十数万円、場合によっては20万円以上の大金を払っているのに、「まあ、レンタルだからサイズが合わないのは仕方ないよね」と、新郎本人が妥協するハメになるのです。
主役としてスポットライトを浴びて、何百枚も一生残る写真を撮られる舞台で、なぜ大金を払ってサイズを妥協しなければいけないのでしょうか?
お父様は「5万円でレンタル」、新郎は賢く使い分ける時代へ
衣装の使い道を冷静に考えると、賢い選び方はハッキリしています。

- お父様のモーニングコート: 昼間の最も格式の高い正礼装ですが、形が特殊すぎて式が終わった後に着る機会はまずありません。式場や衣装屋さんで探せばだいたい5万円前後でレンタルできます。滅多に着ない服ですから、お父様は割り切ってレンタルを利用するのが最も経済的でスマートです。
- 新郎のタキシード・スーツ: 今、当店に来られる新郎さんの中には、本格的なタキシードを作る方ももちろんいらっしゃいますが、「自分が本当に着たい、とびきりお洒落なオーダースーツを着て結婚式に出る」という方がものすごく増えています。
なぜかというと、多くの式場では「基本プランの中にタキシードとドレスが最初から1着ずつ含まれている」からです。
そこで、賢い新郎さんたちはこう使い分けています。
- 挙式(チャペル): プラン内に含まれているレンタルタキシードを着て、クラシックで厳かな雰囲気でビシッと誓いを立てる。
- 披露宴&2次会: お色直しのタイミングで、自分の身体に合わせて仕立てた「自分が本当に着たいお洒落なオーダースーツ」に着替えて登場する!
これなら、式場プランのレンタル枠を無駄にすることなく活かせますし、何より披露宴だけでなく、そのまま自分のスーツを着て2次会まで行けるんです。レンタル衣装だと「2次会への持ち出しは別途追加料金」なんて言われることも多いですが、自分のスーツならどこへ行こうと自由です。
そして結婚式が終わった後も、友人の結婚式、記念日のディナー、勝負どころの仕事で「一生モノの極上スーツ」として何年でも着回せる。 これこそが、現代の新郎が選ぶ最も賢く、最も満足度の高い衣装の選択肢です。
めんどくさいけれど、結婚式は絶対に挙げた方がいい!
ここまで準備の裏側やお金の話をぶっちゃけてきましたが、最後にこれだけは心から伝えたい本音があります。
「結婚式は、挙げるまでは超〜〜〜めんどくさいけれど、絶対にやった方がいい!」
打ち合わせは多いし、宿題はあるし、お金の計算で頭は痛くなるし、パートナーとケンカしそうになることもあると思います。 でも、いざ当日を迎えて扉が開いた瞬間、目の前に広がる光景。
自分のためだけに、これだけの数の大切な人たちが集まって、笑顔で拍手を送ってくれる瞬間なんて、人生の中で絶対に二度とありません。
あの圧倒的な幸せと感謝の気持ちは、どれだけ準備が大変だったとしても、お釣りが来るほど価値のあるものです。 正直、「準備さえなければ、私はもう一回結婚式をやりたいくらい」です(笑)。
だからこそ、準備の途中で金銭感覚が狂って無駄なお金を垂れ流したり、サイズが合わない衣装で後悔したりしてほしくないのです。

