買ったスーツの袖が長い、裾が床についている、ウエストが少しきつくなった。こうした悩みの多くは、買い替えなくてもスーツのお直しで解決できます。
ただし、お直しには「きれいに直せる箇所」と「直すと形が崩れる箇所」があります。この区別を知らずにお店へ持ち込むと、費用をかけたのに思ったほど見た目が変わらなかった、ということも起こります。
この記事では、スーツのお直しでできること・できないことを箇所ごとに整理し、お店に持ち込む前に確認しておきたい点をまとめました。袖丈や着丈など、箇所ごとの詳しい目安は個別の記事で解説しているので、気になるところから読み進めてください。
スーツのお直しで変えられること・変えられないこと
スーツは、生地を裁断して縫い合わせた立体です。お直しは基本的に、縫い目をほどいて詰める(短く・細くする)か、縫い代に残っている生地を出す(長く・太くする)作業になります。
このため、詰める方向のお直しは比較的やりやすく、出す方向は縫い代の量で上限が決まるというのが大原則です。既製スーツの縫い代は、ブランドや価格帯によってかなり差があります。長くしたい、太くしたいという場合は、お店で縫い代を見てもらうまで可否が分かりません。
もうひとつの原則は、肩や襟のようにスーツの骨格にあたる部分は、お直しでほとんど変えられないことです。ここが合っていないスーツは、ほかの箇所をいくら直しても体に沿いません。
箇所別にみる、お直しのしやすさ

代表的な箇所ごとに、直しやすさの目安を表にしました。あくまで一般的な傾向で、スーツの仕様によって変わります。
| 箇所 | 詰める | 出す | 注意点 |
|---|---|---|---|
| スラックスの裾丈 | しやすい | 縫い代次第 | 靴を履いて合わせる |
| スラックスのウエスト | しやすい | 数cmまで | 大きく変えるとポケット位置がずれる |
| ジャケットの袖丈 | しやすい | 縫い代次第 | 本切羽(開く袖ボタン)は難しい |
| ジャケットの胴回り | しやすい | わずか | 詰めすぎると前ボタンが引っ張られる |
| ジャケットの着丈 | 1〜2cm程度 | ほぼ不可 | ポケットとのバランスが崩れる |
| 肩幅 | 難しい | ほぼ不可 | 袖を付け直す大がかりな作業になる |
スラックスの裾丈
お直しの中で最も依頼が多く、仕上がりの満足度も高い箇所です。裾の仕上げはシングルとダブルから選べます。長さの決め方は、立ったときの見え方と座ったときの上がり具合の両方で判断するのがポイントです。詳しくはスラックスの丈の決め方で解説しています。
ジャケットの袖丈

袖口側で詰めるのが一般的で、スーツの印象を手軽に変えられる箇所です。ただし、袖口のボタンが実際に開け閉めできる「本切羽」の場合、ボタンホールの位置が決まっているため袖口側では詰められません。肩側から詰める方法もありますが、手間も費用も大きくなります。目安はスーツの袖丈の目安をご覧ください。
ジャケットの着丈
裾を詰めることはできますが、腰ポケットとの距離が近くなり、全体のバランスが崩れやすくなります。きれいに収まるのは1〜2cm程度までと考えておくのが安全です。長くすることはほぼできないため、着丈は購入の時点で見極める必要があります。くわしくはスーツの着丈の目安で解説しています。
肩幅
肩幅は、スーツのお直しで最も難しい箇所です。袖を外し、肩パッドや芯地を調整して付け直す必要があり、引き受けないお店も少なくありません。仮に直せても、元の立体感を保つのは困難です。肩が合っているかどうかの見分け方はスーツの肩幅の合わせ方にまとめています。
お直しの料金はどう決まるか
料金は、お店の種類(街のお直し専門店、スーツ量販店、テーラー)と、作業の手間で大きく変わります。たとえばスラックスの裾上げは、街のお直し店で2,000円〜3,000円前後がひとつの目安です。
一方で、本切羽の袖詰め、裏地付きの着丈詰め、肩まわりの調整など、縫い目をたくさんほどく作業は料金が上がります。複数箇所を直すと、安価な既製スーツなら新しく買うのと変わらない金額になることもあります。見積もりを取る際は、どこをどれだけ直すと合計いくらになるかを確認してから判断すると失敗がありません。
お店に持ち込む前に確認したいこと
お直しの仕上がりは、採寸のときの準備で大きく変わります。次の点を意識するだけで、思っていた長さと違ったという失敗をかなり減らせます。
- 普段そのスーツに合わせるワイシャツと靴を身につけて行く
- ベルトの位置は、普段締めている高さに合わせる
- ピンを打ってもらったら、腕を動かしたり椅子に座ったりして確かめる
- 直したい理由(見た目なのか、動きやすさなのか)を言葉で伝える
特にワイシャツは見落とされがちです。シャツの袖が長いままだと、ジャケットの袖を正しく直しても短く見えてしまいます。ジャケットとシャツはセットで考えるのが基本です。
ネットで紹介されている長さの基準どおりに直すと、動いたときに失敗しやすくなります。袖丈・裾丈・着丈の3つの決め方については、ブログ「ネットの「スーツ丈基準」を信じると失敗する理由」で紹介しています。
お直しに出すか、買い替えるかの判断
お直しが向いているのは、肩と胸まわりが体に合っていて、丈や幅だけがずれているスーツです。肩が合っていれば、袖丈や裾丈、ウエストを整えるだけで見違えるほどきれいに着られます。
反対に、次のような場合はお直しより買い替えを考えたほうが満足度は高くなります。
- 肩先が腕のほうへ落ちている、または肩が窮屈で腕が上がらない
- 直したい箇所が3つ以上あり、見積もりが新品の価格に近い
- 生地のテカリや擦り切れが目立ち、直しても長く着られそうにない
- 体型が大きく変わり、出す方向のお直しが縫い代の範囲を超えている
思い入れのあるスーツや、良い生地で仕立てたスーツは、費用がかかっても直す価値があります。一方で、安価な既製スーツに大がかりなお直しを重ねるのは、費用の面でも仕上がりの面でもおすすめしにくいのが正直なところです。どこまで直すかは、そのスーツをあと何年着たいかを基準に考えると判断しやすくなります。
直しても合わないときは、肩と体型を疑う
丈を整えればスーツの印象は見違えます。それでもなお、なんとなく借り物のように見える場合は、肩幅や背中、胸まわりといった、お直しでは届かない部分が体に合っていない可能性があります。
たとえば、肩甲骨のまわりに筋肉がついている人は、既製スーツを着ると背中に逆三角形の浮きが出やすくなります(ブログ「ジャケットの背中に「謎の逆三角形の浮き」ができる理由」で詳しく紹介しています)。こうしたズレは裾や袖を直しても解消しません。スーツ全体のサイズ感の見方はスーツのサイズ感の見分け方で解説しています。
何度直しても体に合わないと感じている方は、体型に合わせて型紙から作るオーダースーツも選択肢になります。L’ECRIN(レクラン)では、採寸の段階で体の特徴を細かく記録し、お直しでは対応しきれない肩や背中の形まで合わせてお仕立てしています。お手持ちのスーツの気になる点を含めて、お気軽にご相談ください。
オーダースーツのご相談
袖丈・裾丈・着丈も、肩や腕まわりも、サイズ表ではなくお客様の身体に合わせて仕立てます。既製品が合わずお困りの方も、お気軽にご相談ください。
ご来店は予約制で、サロンを貸し切りでご利用いただけます。
お電話でのご予約:0956-76-9512 ・ lecrin0707@gmail.com

