スーツを選ぶとき、「まず肩幅を合わせなさい」とよく言われます。けれど、実際に試着してみると、どこを見れば肩が合っていると判断できるのか分かりにくいものです。
肩幅は、ジャケットの見た目と着心地を左右するいちばん大事な寸法です。しかも、袖丈やウエストと違って、買ったあとに直すのが難しい部分でもあります。
この記事では、スーツの肩幅が合っているかどうかの見分け方、大きいとき・小さいときのサイン、お直しでどこまで対応できるのか、肩幅だけ合わせてもうまくいかない体型について解説します。
スーツの肩幅がいちばん大事と言われる理由
ジャケットは、肩で生地全体を支えるように作られています。ハンガーに掛けたスーツが肩の部分で形を保っているのと同じで、人が着たときも肩が土台になり、そこから胸、背中、袖へと生地が落ちていきます。
そのため、肩が合っていないと、その下にある部分すべてに影響が出ます。肩が大きければ袖まわりにくぼみやたるみが生まれ、小さければ胸や背中に引っ張られたシワが出ます。ウエストや袖丈をいくら整えても、土台がずれていればきれいには見えません。
もうひとつの理由は、肩まわりがジャケットの中でも構造の複雑な部分だということです。肩パッドや芯地、袖の取り付けが重なっているため、仕上がったあとに寸法を変えるのは大がかりな作業になります。だからこそ、既製品を選ぶときは肩を最優先で合わせるのが基本です。
肩幅が合っているかの見分け方

鏡の前でジャケットを羽織り、ボタンを留めて自然に立った状態で、次の3点を確認します。
肩先が自分の肩の端とそろっている
ジャケットの肩の縫い目の先端が、自分の肩の骨のいちばん外側とほぼ同じ位置にあるのが目安です。正面から見て、肩先から袖にかけてのラインがなだらかにつながっていれば、肩幅は合っています。
袖の付け根にくぼみもシワもない
腕を下ろしたとき、袖の付け根まわりが滑らかであることも大切です。肩先が落ちてくぼんでいたり、逆に袖の付け根に横向きのシワが出ていたりする場合は、肩幅が合っていないサインです。
腕を前に出しても肩が持ち上がらない
立ち姿だけでなく、腕を前に伸ばしたり、軽く上げたりしてみてください。肩まわりが突っ張って、ジャケット全体が持ち上がるようなら、肩幅かアームホールが窮屈です。
肩幅が大きいとき、小さいときのサイン
| 状態 | 見た目のサイン | 起こりやすい印象 |
|---|---|---|
| 肩幅が大きい | 肩先が自分の肩より外に出て垂れる、袖の付け根がへこむ | だらしない、スーツに着られている |
| 肩幅が小さい | 肩先が肩の内側に入り、袖の付け根に横ジワが出る、肩が盛り上がる | 窮屈、無理に着ている |
大きいときは「肩先が落ちる」
肩幅が大きいと、ジャケットの肩先が本来の肩より外側に出て、重みで下に垂れます。肩パッドが入っている場合は、パッドの端が肩から浮いて見えることもあります。体型に対して全体的に大きいサイズを選んだときや、胸囲に合わせてサイズを上げたときに起こりがちです。
小さいときは「横ジワと盛り上がり」
肩幅が小さいと、肩先が肩の内側に収まりきらず、袖の付け根まわりに横ジワが出ます。肩の端が押されて、肩先がこんもり盛り上がったように見えることもあります。腕を動かすたびに肩が突っ張るので、着心地の面でもストレスが大きくなります。細身に見せたくて小さめのサイズを選んだときによく見られます。
肩幅のお直しはできるのか
結論からいうと、肩幅のお直しはできなくはありませんが、おすすめしにくいお直しです。
肩幅を詰めるには、袖をいったん取り外し、肩まわりの生地や肩パッド、芯地を調整してから袖を付け直す必要があります。工程が多く、費用も袖丈やウエストのお直しよりかさむのが一般的です。さらに、肩の形や袖の付き方は全体のバランスで作られているため、詰めたあとに袖まわりの見え方が変わってしまうこともあります。
対応できる幅にも限りがあり、大きくサイズが違うものを肩だけ直して合わせるのは現実的ではありません。袖丈やウエストなど、ほかのお直しで調整しやすい部位についてはスーツのお直しガイドで詳しく紹介しています。
既製品の場合は、購入するときに肩が合うサイズを選ぶのがいちばんの対策です。肩で選んでおけば、胴回りの余りや袖丈はお直しで比較的手軽に合わせられます。
肩幅だけ合わせてもうまくいかない体型
肩の端の位置が合っていても、なぜか肩まわりがきれいに見えないことがあります。その場合は、肩幅以外の要素が関係しているかもしれません。
いかり肩となで肩
肩の高さや傾斜には個人差があります。肩が水平に近いいかり肩の人は、首の付け根から肩先にかけて生地が突っ張りやすく、衿の後ろが浮くことがあります。反対に、肩が下がったなで肩の人は、肩先に生地が余って斜めのシワが出やすくなります。
既製スーツは標準的な肩の傾斜で作られているため、肩幅が合っていても傾斜の違いはカバーできません。オーダーでは、こうした肩の傾斜に合わせて型紙を補正します。
肩甲骨が張っている
腕を使うスポーツを続けてきた人は、肩甲骨まわりの筋肉が発達していることが多く、背中の真ん中が浮いて逆三角形のたるみができやすくなります。正面から見る肩幅は合っていても、後ろ姿で問題が出るケースです。
競艇選手や野球のピッチャーの背中を仕立てた事例については、ブログジャケットの背中に「謎の逆三角形の浮き」ができる理由で紹介しています。
肩や腕に筋肉がついている
肩の骨格は標準でも、肩まわりや二の腕の筋肉が大きい人は、肩幅より先に腕の付け根が窮屈になります。この場合、肩幅だけ広げても解決せず、アームホールや袖の太さを一緒に調整する必要があります。体格がいい人のスーツ選びについては、マッチョ・ガタイがいい人のスーツ選びで解説しています。
肩パッドの有無でも印象は変わる
肩まわりの印象は、肩幅の寸法だけでなく、肩の作り方でも変わります。
厚めの肩パッドが入ったジャケットは、肩のラインがはっきり出て、かっちりとした印象になります。いっぽう、パッドを薄くしたり入れなかったりする柔らかい仕立ては、自分の肩の形に沿った自然な印象になります。
なで肩の人は適度なパッドで肩のラインを補うと全体が引き締まって見え、もともと肩幅が広い人は薄めのパッドのほうが大きく見えすぎずに済みます。同じ肩幅でも、肩の作りを変えるだけで印象の調整ができます。
既製スーツを選ぶときの手順

既製品で肩幅を合わせるときは、次の順番で試着すると迷いにくくなります。
- ジャケットだけを羽織り、肩先の位置が合うサイズを探す
- 肩が合ったサイズで前ボタンを留め、胸や胴回りに無理がないか確かめる
- 腕を前に出し、肩や背中が突っ張らないか動いて確認する
- 袖丈やウエストの余りは、お直しで調整できるかを店員さんに相談する
肩が合うサイズで胸や胴が窮屈になる、あるいは肩に合わせると全体が大きすぎるという場合は、体型と既製品の比率が合っていない可能性があります。サイズ全体の見方はスーツのサイズ感の正解も参考にしてください。
肩まわりから合わせて仕立てたい方へ
肩幅はスーツの土台です。ここが合っていれば、ほかの部分はお直しで整えやすく、全体の印象もぐっと引き締まります。反対に、肩が合わないまま着続けると、どれだけ他を直してもどこか落ち着かないままです。
既製品では肩がどうしても合わない方、いかり肩やなで肩、肩甲骨の張りなどで肩まわりに違和感がある方は、オーダーで肩から合わせて仕立てるのも一つの方法です。L’ECRIN(レクラン)では、採寸のときに肩の傾斜や背中の形まで細かく確認し、お一人ずつの体に合わせてお仕立てしています。長崎県北松浦郡佐々町の完全予約制のサロンで、ご相談をお待ちしています。
オーダースーツのご相談
袖丈・裾丈・着丈も、肩や腕まわりも、サイズ表ではなくお客様の身体に合わせて仕立てます。既製品が合わずお困りの方も、お気軽にご相談ください。
ご来店は予約制で、サロンを貸し切りでご利用いただけます。
お電話でのご予約:0956-76-9512 ・ lecrin0707@gmail.com

